XLSTAT によるクロス集計表の2D プロット:データの相対的な重要度を可視化しよう
クロス集計表の2D プロットとは?
「クロス集計表の2D プロット」は、2つの要素(変数)の組み合わせごとのボリューム(度数や集計値)を、図形の大きさで表現する可視化機能です。通常、アンケート結果や売上データなどは「クロス集計表」としてまとめられますが、この機能を使うことで、「どの組み合わせの数値が大きいか(重要か)」を一目で把握できる図(バブルチャートのような見た目)を素早く作成できます。
このツールの大きな魅力は、データの形式を選ばず柔軟に使えて、見た目にもわかりやすいグラフを作成できる点です。すでに集計された「表」からはもちろん、集計前の「生データ(質的変数)」から直接プロットを作成することも可能です。グラフ上では、各項目の値の大小が円や正方形などの図形のサイズで表現されるため、数値だけの表よりも直感的に比較することができます。年代別の商品嗜好や地域別の売上構成といった、2つのカテゴリ間の関係性を一目で伝える必要のあるプレゼンテーション資料などの作成に最適です。
2D プロットを作成するためのデータセット
今回は、「地域によってお菓子の好みに違いはあるのか?」をテーマに分析を行います。使用するデータは、総務省統計局の「家計調査(2022年〜2024年平均)」データをもとに、日本の8地方区分における主要な菓子類5品目の「年間支出金額(円)」を分析用に集計・加工したものです。
【地域別 × 菓子類クロス集計表】 (単位:円/年間支出金額)
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出典・参照元:
総務省統計局 家計調査(二人以上の世帯) 品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング(2022年(令和4年)~2024年(令和6年)平均
https://www.stat.go.jp/data/kakei/5.html
※本ページのデータは上記統計をもとに、8地方区分(北海道・東北・関東・中部・近畿・中国・四国・九州・沖縄)へ独自に集計・加工を行っています。
この表を見るだけでも「どの地域もようかんの支出金額が少ないな」といったことは分かりますが、地域間のバランスや金額の差を脳内で瞬時にイメージするのは困難です。そこで今回はこちらのデータをもとに2D プロットを作成して、地域別にどのような傾向があるのかを可視化してみます。
サンプルデータのダウンロードはこちらから
sample-data-for-2D-plots.xlsm2Dプロットの作成手順
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XLSTAT を起動し、 [発見、説明および予測] > [データ可視化] > [クロス表の2Dプロット] を選択します。

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ダイアログボックスが表示されたら、以下のように設定します。

- データ形式:[ピボット・テーブル] を選択
- ピボット・テーブル:表全体(見出しを含む)を選択します。
- ラベルを含む:
見出しを含めてデータを選択している場合は、チェックを入れます。 - タイトルの表示:
出力結果の2D プロットにタイトルを入れる場合は、入力します(例:「地域別菓子類支出金額」)。
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[オプション] タブに切り替え、表示オプションを調整します。

- 形状:
プロットの形状を選択します。「丸 」や「四角」だけでなく、立体的な「バブル」も選択可能です。お好みのスタイルを選んでください。 - サイズ:
「領域」を選択します(数値の大きさを面積で表現します)。 - 下部に水平軸・グリッド:
チェックを入れておくと結果が読みやすくなります。
【補足】プロットが大きすぎて重なってしまう場合
データの数値が大きい場合、デフォルトの設定ではプロットが巨大になりすぎて、隣同士が重なってしまうことがあります。その場合は、同じ[オプション] タブ内にある「スケール(%)」の数値を、デフォルトの「100」から「20」程度まで下げて調整してください。比率はそのままでプロット全体を小さく表示し、重なりを防ぐことができます。
- 形状:
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[OK] をクリックすると、別シート(2D表示)にグラフが出力されます。
2Dプロット出力結果の見方と解釈
計算が完了すると、新しいシートに2D プロットが生成されます。縦軸に「地域」、横軸に「お菓子の種類」が並び、支出金額の大きさが「円の面積」で表現されています。
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この1枚の図から、表の数字だけでは見えにくかった3つの特徴的な傾向が見えてきます。
① 「せんべい」に見る地域差
「せんべい」の列を見ると、東北・関東・中部では比較的大きな円が並びますが、西日本(中国・四国・九州・沖縄)へ行くにつれて円が小さくなる傾向が見て取れます。 また、「北海道」も比較的小さな円となっています。東北や北陸は「米どころ=せんべい・あられ」のイメージがありますが、北海道は米だけでなく「小麦・砂糖・牛乳・バター」の日本一の産地でもあります。このことから米菓よりも乳製品や小麦を使った洋菓子が好まれるのかもしれません。
② 「ようかん」に見る市場の濃淡
「ようかん」の列は、全体的に円が小さく、消費金額はほかの品目より少額であることが分かります。 しかし、縦に見比べると、関東(939円)と沖縄(215円)では大きさに顕著な差があります。地域によって需要の強さにバラつきがあるため、地域特性に応じたマーケティングが重要になることが示唆されます。
③ 「沖縄」における独自の消費動向
「沖縄」の行に注目すると、「ようかん」や「せんべい」といった和菓子カテゴリの円が非常に小さくなっています。 一方で、「チョコレート」や「ケーキ」といった洋菓子カテゴリは、ほかの地域と比較しても遜色ない大きさを維持しています。また、今回のグラフには含まれていませんが、沖縄では「サーターアンダギー」や「ちんすこう」といった地域固有のお菓子が日常的に消費されており、これらは統計上「他の菓子」等に分類されている可能性があります。一般的な和菓子カテゴリの円が小さい背景には、こうした独自の菓子文化の存在も影響していると考えられます。
※分析結果に関する注記
上記結果の解釈は、XLSTAT の2Dプロットによって可視化されたデータの傾向から導き出した推測の一例です。本記事の目的はXLSTAT の機能解説にあり、厳密な因果関係の特定には、より詳細な質的調査や要因分析が必要となる点にご留意ください。
まとめ
「クロス集計表の2D プロット」機能は、クロス集計表を視覚的な図に変換し、数値データの羅列だけでは見えにくい傾向を浮き彫りにします。今回のようなエリア別の消費金額のデータであれば、市場のボリューム(円の大きさ)と地域ごとの偏り(縦横の比較)を同時に可視化できるため、感覚的な議論ではなく、データに基づいた建設的な検討をサポートするツールとして役立ちます。お手元の売上データやアンケート集計表で、新たな視点を発見する手段としてぜひ活用してみてください。
参考文献
- XLSTAT: Visualize crosstab tables using 2D plots in Excel
https://community.lumivero.com/s/article/6534-visualize-crosstab-tables-using-2d-plots-excel-es?language=en_US - 家計調査(二人以上の世帯) 品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市(※)ランキング (2022年(令和4年)~2024年(令和6年)平均)
https://www.stat.go.jp/data/kakei/5.html
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