コラム:文献管理

文献管理ソフトとは? ~従来の文献管理方法との比較と、文献管理ソフトを使用するメリット~


文献管理ソフトとは、収集した文献の管理・引用に役立つ、文献情報の一元管理が可能なソフトウェアです。

文献管理ソフトは、文献・文献情報の収集、論文作成の手間を減らすだけではなく、学会での発表や、授業やゼミでのレポート・中間発表など、様々な用途で役に立ちます。

本コラムでは、従来の文献管理方法と、文献管理ソフトウェアを活用した方法を比較し、どのような違いがあるかを示していきます。



文献管理ソフトとは?

文献管理ソフトは、収集した文献の管理・引用に役立つ、文献情報の一元管理が可能なソフトウェアです。引用管理ソフトウェアとも呼ばれ、英語ではReference Management Softwareと呼ばれています。

文献管理ソフトが登場した当初、1980年代からしばらくの間は日本語入力に対応しておらず英語のみに対応していたためか、文献管理ソフトは理系のソフトというイメージを持っている方も少なくありませんでした。しかし、現在では日本語入力・日本語文献に対応しており、理系・文系といった垣根はなく、文献に関わる全ての方に役立ちます。

文献管理ソフトは、文献・文献情報の収集、論文作成の手間を減らすだけではなく、学会での発表や、授業やゼミでのレポート・中間発表、業績集作成など、様々な用途で役に立ちます。

文献管理ソフトは文献情報の収集の段階から論文執筆の引用までカバー。
日本語対応もしており、理系/文系問わず文献に関わる煩雑な作業を効率化します。

文献管理ソフトは引用管理ソフトウェアとも呼ばれているように、参考文献リストを作成するソフト、論文執筆に使うソフトというイメージが強いですが、それはソフトウェアの機能の一部でしかありません。

文献の収集、閲覧、保存・管理に便利な機能を持っており、論文を執筆しない方、普段は論文を読むだけという方にも非常に有用です。文献に関わる煩雑な作業を効率化するので、文献を読むとき、執筆するときの作業・ストレスが格段に減ります。従来の方法の問題点、文献管理ソフトを使うとどのように変わるのかは後述します。



従来の管理方法の問題点

文献管理ソフトを利用せずに自分で文献を管理する場合、以下の点が悩みとして考えられます。


PDFなどをローカルフォルダで保管

PDFをパソコンのローカルフォルダに保存すると、文献情報が散在し、都度探しにいく必要があります。加えて、ファイルを開くまで内容は確認できないので、ローカルフォルダとPDFリーダーを何回も往復する必要があります。

また、個々の文献を識別するために、PDFファイルのタイトルを自身の分類に従って保存の都度編集することもあるでしょう。ローカルPC内の検索は時間がかかる上に、タイトルにキーワードが含まれていないと検索に引っかからないなどの難点があります。

階層が深くなると探しにくくなるうえ、一発で呼び出すことができません。

文献情報の分類・管理

発行年別、著者別分類、アルファベット順、読み仮名、研究分野別など、使用者の使い方にもよりますが、保存した文献をテーマに沿って分類していく作業が発生した際、時間を要します。フォルダで管理する場合は分類用のフォルダ数も増え、階層も深くなりがちです。

例えば文献情報をExcelで管理しようとすると、手打ちで細かな情報を漏れなく記載する必要があり、文献数が膨大になるほど作業が煩雑になることは想像に難くないでしょう。

また、参考文献リストを作成する際は、エクセルなどに記載の内容を自分の手で一つ一つジャーナルのフォーマットに合わせてコピーしたり、編集したりする必要がありますので、総説論文など数十以上の参考文献がある場合は非常に手間がかかります。

excelでの文献管理の例。手入力やコピペする必要があり非常に煩雑。また、フルテキストPDFは別管理になる。

未読・既読の判別

保存した文献の中でも、「文献のフルテキスト閲覧済み」「アブストラクトのみ確認」「全く未読」などと、読み込み具合に差異が生じることがあります。既読・未読のフォルダを作成し文献を振り分けすることはできますが、読み終わったら移動させる必要があり、その都度作業が発生するため、二度手間となります。

未読フォルダから既読への移動などは二度手間となります。


文献が散在するデメリット

冨澤康子氏は、文献が散在するデメリットについて、下記のように述べています。

論文を書くときに集める文献の数は少なくない。英語で原著を書くとき,引用する文献が30件とすると,その3倍の論文を詳細に読み,その3倍をOnline Journalからダウンロードし,また雑誌から複写し,さらに文献相互貸借で他施設から取り寄せることになる。

プロジェクトがいくつも同時進行していて,机に参考文献を積み重ねると,持っているはずの論文を探せなくなり,同じ文献を何回も複写することが起こる。そこで文献をフォルダにいれるが,「検索機能」がなければ,見つけるのに時間がかかる。(富澤,2008)

検索機能のある文献管理の手段として、「Evernote」が挙げられます。EvernoteではPDFを取り込み・管理が可能であり、PDFやその他文書の文字検索も行えるため、文献を管理するのに適しています。

一方、レポート提出・論文執筆など研究成果の発表・報告をする場合は、文献に関する細かな文献情報(ページ数やDOI etc..)を収容しづらく、また引用する際も投稿規定や引用ルールに準じて手打ちで一つずつ入力していくため、労力がかかり不向きといえます。

文献管理ソフトを使用することで、上記のような問題点を解消することができます。


文献管理ソフトのメリット

文献管理ソフトの主な使用用途は、参考文献・文献情報を管理することです。様々な情報を収集していくうちに参考文献が増えていきますが、それをソフト上で一括管理することで探しにいく手間を省き、管理の手間を軽減します。未読・既読の把握、重要度による仕分けなども容易です。

タグ付けのように文献に対してメモなどを追加していくことで検索容易性を高めることができ、フォルダ管理などと比較して、目的の文献を探す手間が省けます。文献管理ソフトはデータを蓄積していくことで自分専用の参考文献・文献情報のデータベースとしても機能します。システマティックレビューの際にもよく使用されています。

▼参考 EndNoteをシステマティックレビューに活用する | EndNote使用ヒント集
▼参考 ライブラリ内のレコードにメモを付ける | EndNote使用ヒント集


また、保存した文献はいつでもどこでも閲覧できるのが理想ですが、ローカルPCでは難しい場合もあります。現在の文献管理ソフトは、パソコン上はもちろん、ウェブブラウザ上、タブレット・スマートフォンのアプリ上で文献を閲覧できるものがほとんどです。

時間や場所を選ばずに必要な文献にサッとアクセスできるので、通勤・通学などスキマ時間にも文献をナナメ読みするなど時間を有効活用することが可能になります。

スキマ時間も有効活用が可能。


タブレットやスマートフォンであれば拡大・縮小も容易なので、紙やPCのディスプレイよりも読みやすいこともあります。また、文献管理ソフトによっては文献にペンや指での書き込みも可能です。文献管理ソフトを導入することでPDF読み書き用のアプリを導入する必要もなくなり、一つのアプリ内で一元管理が可能になることで手間が省けます。
▼参考 iOS用アプリEndNote for iOS

須賀万智氏は、文献管理ソフトウェアは、機能として通常以下の項目を備えていると定義しています。

  1. 文献データベースから検索した結果を文献リストとして保存する
  2. 文献リストを編集・検索する
  3. 論文の執筆の過程で文献リストから参考文献リストを作成する(須加, 2007)

以下はEndNoteを使った場合の使用例です。


文献データベースから検索した結果を文献リストとして保存する

PubMed、Google Scholar、医中誌Web、CiNii、Web of Science等多数のデータベースで、検索した文献情報をEndNoteに直接取り込めます。取り込んだ文献情報から利用可能なPDFを自動取得することも可能です。

文献を選択するだけで、PubMedなどの文献データベースから文献情報をカンタン取り込みが可能


文献リストを編集・検索する

ソフト内に取り込んだ文献情報やPDF本文を横断検索することが可能なので、カンタンに目的の文献にアクセスできます。文献情報だけでなく、「添付したPDF内の文章」、「PDF内に追加したメモ」なども検索対象です。

例えば、疾患名や治療名などのメモを付けて保存しておけば必要なときにすぐに参照することができます。また、文献管理機能として、取り込んだ文献情報のアップデートや、重複文献の削除などが簡単に行えます。

文献情報やPDFから文献の検索が可能。

論文執筆の過程で文献リストから参考文献リストを作成する

取り込んだ文献情報をWordへ出力するだけで簡単に参考文献リストが作成できます。本文中の引用表記を削除したり、順番を入れ替えたりしても、自動的に引用番号を振りなおします。リジェクトなどで投稿先を変更する場合も、次の投稿先の雑誌名を選択するだけで参考文献リストの体裁の変更が可能です。



EndNoteについて

EndNoteは30年以上の実績を持つ、世界中で愛用されている代表的な文献管理ソフトです。EndNoteは文献管理に便利な多くの機能を有しています。

EndNoteについて詳しくはこちらのページをご覧ください。

© 2024 USACO Corporation. All rights reserved.
ユサ株式会社
関連サイト