Vol.50:インパクトファクターをどう見るか: エキスパート7人の視点
インパクトファクターについては、これまでに様々な議論がなされてきました。インパクトファクターは絶対に必要だと考える研究者もいれば、なくしたほうがよいと思っている研究者もいます。また、他の評価方法と併用したらどうかと考える第3のグループも存在します。
学術出版界のエキスパートたちはどう見ているのでしょうか?出版業界エキスパートへのインタビューをまとめました。
インパクトファクターに関する不朽の名言7選
研究者の業績とジャーナルの信頼度を測定する究極の方法がインパクトファクターだと考える人は大勢います。学術出版界のエキスパートたちはどう見ているのでしょう?
エディテージ・インサイトの過去のインタビューから、インパクトファクターに対する出版業界エキスパートたちの見解を抜粋しました。
- 「ジャーナルを1つの数値で評価するのは、複雑で多様な形態の生物をたった1つの特徴で評価しようとするに等しく、そのただ1つの特徴を基準にして『このジャーナルはどれぐらい優れているのか』と尋ねるようなものです。ジャーナルの質に関する真の複雑さを探ろうとするなら、『このジャーナルはどのような点で、誰にとって重要なのか?』という問いの方が適切でしょう」
レイシー・アール
Cabell's International/ビジネス開発部門バイスプレジデント - 「研究論文の影響とインパクトを理解する最善の方法は、たった1つのデータに依存することなく、様々な評価指標(メトリクス)を活用することです」
メリンダ・ケネウェイ& チャーリー・ラップル
Kudos/共同創設者 - 「研究者としてターゲットジャーナルを選ぶ際に重要なのは、自分の研究分野の論文が掲載されていること、目的と対象領域に自分の論文が適合していること、そしてジャーナルが分野内で広く読まれていることです。これらの要素の方が、インパクトファクター等の表面的な評価よりも重要です」
张林琦(Linqi Zhang)
精華大学基礎医学部・総合AIDS研究センター/学部長 - 「『重要性』を評価する唯一無二の方法を見つけることなどできません。でも、だからといってインパクトファクターが無意味だというわけではありません。インパクトファクターはそれ自体が問題視されることもありますが、問題なのは、この複雑で多元的な問題を、1元的な問題に矮小化してしまうことです」
ジョー・ロイスリエン博士
スタヴァンゲル大学健康科学部准教授 - 「インパクトファクターは有益なツールで、この指標によって我々のジャーナルの位置づけがよく分かることは間違いありません。しかし、それがそのままジャーナルの業績につながるわけではありません」
イアン・ストーンハム
英国工学技術学会(IET)出版部 - 「『インパクト』とはもともと、引用やインパクトファクターを利用して、ある論文の学術的影響力を測定することでした。でも最近では、例えばデータセットやソフトウェアなど、他のタイプの研究成果や他の種類のインパクト、例えばより幅広い社会的・経済的インパクト、または政策・慣行上のインパクトなども重視されるようになってきました」
ユアン・アディー
Altmetric/CEO、創設者 - 「これまで世界中の研究者と意見交換をしてきましたが、"良き科学"とは何ですか?という問いに対する答えはいつも同じでした。"科学的に優れている"研究とは、(a) 質が高く、(b) 世界に貢献する、というものです。インパクトファクターのような、被引用数に基づいた指標では、このどちらについてもほとんど分かりませんが、オルトメトリクスによっては分かるものもあります」
ステイシー・コンキール
Altmetric/アウトリーチ・契約担当マネジャー