Vol.54:査読コメントへの返答の仕方に関するアドバイス
学術誌に論文を提出した後の次なる重要通過点は、査読者とのやり取りに対応する準備です。
査読コメントへの返答は大きなストレスとなることもあります。査読コメントの全てに対応しなければ、論文は受理されませんし、しかもコメント内容は、些細な文言の変更から大幅な内容修正まで、多岐に渡ります。
しかし、査読コメントに合理的に対処する心構えがきちんとできていれば、そのプロセスはさほど手ごわいものではありません。以下に、自信をもって査読コメントに返答するためのアドバイスを挙げてみます。
■反発ではなく、返答する
どんな場合も、査読者のコメントにすぐさま応えるのではなく、一息入れてから返答するのが賢明です。時間をかけてコメントや提案を読み直し、各問題点にどのように対応するかを決めましょう。そうすることで、査読者の懸念を確実に理解できるはずです。
■秩序立てて回答する
査読者は、コメントや提案をパラグラフ(節)形式で書いてきます。これらに番号を振り、1つずつ回答していきましょう。それぞれの査読コメントを「査読者1」「コメント1」などのように更に細かく整理してもいいでしょう。
■自分の議論に一貫性があり、論理的であることを確認する
著者は、査読コメントの全てに同意しなければいけないということはありません。もし意見が異なるならば、ためらわずにそう書きましょう。
しかし、ただ単に査読者の提案に反論するのではなく、同意しない理由を説明することです。根拠に基づいた論理的な返答ができれば、査読者は著者の思考を辿りやすくなり、著者の理論を受け入れることにもつながります。
■詳細かつ具体的に
返答は詳しく、かつコメントのあらゆる側面に対応したものにし、編集者や査読者に理解されやすいようにしましょう。編集者・査読者の時間を無駄にしないよう、データの出典を明記する他、自分が行なった実験について記述したり、修正した文章を含めたりすることを検討しましょう。
■語調を適切に保つ(語調が乱れないようにする)
著者がコメントに対して感情的に返答することはよくありますが、これは語調に表れるものです。査読はあなたの研究への評価であり、個人的判断だということを忘れないようにしましょう。
査読者のコメントに断固として同意しないことを述べる場合も含め、全面的に丁寧な調子を保つようにしましょう。同意しない場合は、自分の立場を裏付ける科学的説明を添えるのが一番です。
■査読者の努力に感謝する
査読者は、査読に対する報酬を受け取ることはありません。大抵、その分野に情熱を持っていて、任意で行なっています。査読コメントが長く、広範に渡っているほど、あなたの研究に時間を割いてくれたということです。査読コメントは建設的なフィードバックであると捉え、彼らの時間と努力に感謝を忘れないようにしましょう。
■査読コメントに同意する義務を感じる必要はない
「査読者に同意することを求められている」という理由で、査読者に同意することはやめましょう。最終的には、あなた自身の研究と、研究者としての評判に跳ね返ってきます。
■相反するフィードバックに対応する
もし別々の査読者から相反するコメントをもらった場合には、自分の考えにより近いと判断した査読者のアドバイスに従い、そう判断した理由を編集者に説明しましょう。あるいは編集者に、相反するコメントに対するアドバイスを求めましょう。
■大幅修正の要請に対応する
掲載スペースが限られていることから、字数制限が定められているので、原稿が字数制限内に収まるようにしなければなりません。査読者が大量のデータを要求したり、1ページ以上の記述を加えることを要求したりすることもあります。もし、提案が自分の研究範囲に見合うものであり、同意できるものならば、字数制限内での追記が可能かどうか、ジャーナル編集者に相談することもできます。
以上のアドバイスは、査読コメントに自信をもって的確に対応するのに役立ちます。また、研究の質を高めることにもつながるでしょう。