Vol.52:査読コメントへの返信でやっていいこと、ダメなこと
査読コメントに対処するのは、経験豊かな著者であっても困難な仕事です。査読者のコメントが冗長で、いったい何を言いたいのかわからないといった場合もあるでしょう。査読コメントを受け取ったら、まずは注意して数回繰り返し読むことが大切です。
最初に査読コメントを読んだときは、「査読者は自分の研究を正確に理解していない」とか、「無理な注文を付けている」と感じるかもしれません。気分を害することもあるかもしれません。たとえそう感じても、感情にまかせてそのまま回答を書き始めるのではなく、じっくりと構えてみることが大事です。
時間をおいて、数日後に査読者のコメントを読みなおしてみることも一つの手です。客観的な目で読んでいるうちに、査読者の視点を、当初とは別の角度から読み取ることができ、どうやってコメントに応えたらよいかわかってくるものです。
まずは、査読者の主な留意点を特定しましょう。例えば、査読者のコメントは、あなたが研究で用いた方法論について集中的に取り上げているのでしょうか?
それとも、結果の解釈の仕方に疑問を抱いているのでしょうか? 自分の論証を裏づける追加データはありますか? 査読者の留意点を把握できたなら、どうやって回答するかを練りましょう。
査読者のコメントがいくつかのパラグラフで構成されている場合には、いくつかのポイントに分割して、それぞれについて個別に対処しましょう。
あるコメントについて複数の解釈が可能な場合には、回答の冒頭で、コメントを読んでどう理解したか説明するところから始め、その後に自分の主張を続けます。
次に査読に回答するにあたって、やっていいこととダメなことを列挙してみます。
やっていいこと
- 共著者やあなたの研究に通じている同僚に相談する。彼らとブレインストーミングすることで、査読者の複雑なコメントにどう対処したらよいか、最善策が見つかるかもしれません。
- 一つ一つのコメントに対して、完全に回答する。万が一、コメントで述べられているポイントが、すでに論文の中で扱われていたり、ある指摘がその研究の範囲を超えていると感じたりしたら、そのことも回答の中で述べてください。
- 査読者のコメントや指摘に同意できない場合でも、丁寧に回答する。
- 必要な場合には文献を引用し、主張を裏づけるために必要な補足的(あるいは未発表)なデータを付加する。
- 迅速に回答する。また、査読者の指摘にもとづいて論文を変更した場合には、どこを変更したかわかるようにする。
ダメなこと
- コメントの一つ一つに対して、いちいち異議を唱えない。全面的には同意できなくても、それほど大きな問題ではなく、査読者の意見を受け入れても研究の価値に影響がないような場合には、あえて査読者とやりあうよりも、そのコメントを受け入れたほうがいい場合もあるでしょう。
- 査読者からのネガティヴなコメントを自分に対する個人攻撃と受け止めない。中立的な立場でコメントを読み、回答に力を尽くしましょう。
- 回答の手紙では、「全く同意できません(we completely disagree)」といった表現は使わないようにする。
- 査読者からオリジナルデータの提出要求があった場合には、その要求は拒否しないようにする。
査読後に論文がリジェクトされたり、査読者のコメントがあまりに厳しいときには、回答できないくらい厳しそうに見える時、多くの著者がコメントへの回答をやめて、別のジャーナルへ投稿しようとします。
かりにそうするとしても、可能な限り査読者のコメントに即して論文を修正したほうが賢明です。そうすることで、他のジャーナルに投稿した際にも、採択される可能性が高くなるからです。
以上のアドバイスが皆さんのお役に立てば嬉しいです。皆さんは査読者のどんなコメントが、一番回答しにくいと感じますか?