Vol.86:研究がひと目でわかる-グラフィカルアブストラクトの持つ力
昨今、皆さまの研究分野のジャーナルでも、グラフィカルアブストラクトを求められることが増えてきているのではないでしょうか。Editageではこのニーズに合わせ、この度ジャーナルのガイドラインに合わせた2Dおよび3Dのグラフィカルアブストラクトを制作する「グラフィカルアブストラクト制作」サービスをリリースしました。
このサービスはお客様の英語論文の内容とターゲットジャーナル情報を踏まえ、2Dまたは3Dのグラフィカルアブストラクトを制作するサービスで、研究分野とデザイン両面の専門家により、わかりやすくて美しく、かつ論文の科学的表現の適切さを保持したグラフィックを提供します。
そこでこの記事では、サービスリリースに伴い、なぜこれからの研究発表においてグラフィカルアブストラクトが必要なのかを改めて解説していきます。
前提として、今日では数えきれないほどの論文が発表されています。これらの論文のうち、実際に読まれ、正しく理解されているものはどれくらいあるのでしょうか? 70万件以上のアブストラクトを調査した最近の研究の著者は、科学文献の読みやすさが一貫して低下しており、研究の再現性やアクセシビリティが損なわれていると報告しています。
複雑な研究を、その分野の専門用語に詳しくはない幅広い読者にとって、魅力的で興味深いものにするにはどうしたらよいでしょうか? また、専門家にも一般読者にも目立つ論文にするにはどうしたらよいでしょうか? そこでグラフィカルアブストラクトが非常に役立ちます。
【目次】
改めて、グラフィカルアブストラクトとは何か
グラフィカルアブストラクトは、論文のコアとなる、主要な発見を簡潔かつ視覚的に伝えるためのサマリーです。学術論文内にある図表とは異なり、グラフィカルアブストラクトは研究の視覚的な要約であり、研究のギャップ、疑問、発見、および結論を1つのイメージで伝えます。グラフィカルアブストラクトは、科学論文のアクセス性の向上と、深い専門分野に対する知識がない読者層の理解を向上させることを目的としています。
また、グラフィカルアブストラクトはソーシャルメディアや、オープンアクセスといったメディアを通して、次々に新しい情報が発信、消費されていく現代において高まるニーズにも合った研究発表の方法であると言えます。
今日の高度にデジタル化された環境により、研究者や出版社は、より少ない文字数とより豊富なコンテンツを使用して研究を伝える方法を再考する必要があります。その方法のひとつとして多くの学術出版社は、著者に研究のハイライトや、さらには「グラフィカルアブストラクト」を提出するよう奨励しています。
(参考:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Wielstra2019_Triturus_Graphical_Abstract.jpg) 新種イモリ属トリトウロスの簡略な系統を示すグラフィカルアブストラクト
グラフィカルアブストラクトが重要な7つの理由
グラフィカルアブストが数年前から様々な学術誌で使われるようになった背景として、時代に合わせた情報収集方法や研究に伴い情報収集にかける時間の変化など、複数の理由が挙げられます。ここではその中から7つをご紹介します。
1. 人間は感覚の中でも「視覚」に最も頼る
画像は文字よりも6~600倍速く処理されることを知っていましたか? また、Xのポストに画像を含めると、エンゲージメントが増加することは広く知られています。そのため、グラフィカルアブストラクトを含む投稿は、含まない場合の約8倍ものソーシャルメディアのエンゲージメントの可能性があり、そしてその論文は3倍ものビューにつながると考えられています。
つまり、グラフィカルアブストラクトの使用は、閲覧数、クリック数、ひいては引用数の増加につながるため、読者にだけではなく、出版社、および著者にとってもメリットがあります。
2. 情報収集に人がかける時間の短縮に対応
書籍やブログを通してじっくり情報を収集するという過去の文化から、現在はスマートフォンで、ネット上のまとめやYouTubeの動画を通してまずは大枠を捉えるためにさっと目を通す文化へと主流は変化しました。グラフィカルアブストラクトはその流れに適したもので、読者はこのイメージ1枚を見るだけで、関心事や知りたいことに最も関連した論文であるかを素早く判断できます。
3. グラフィカルアブストラクトは画像検索で見つけられる
Googleで検索する際に、テキストよりもイメージ一覧を見て検索結果を確認する方も多いのではないでしょうか。グラフィカルアブストラクトはイメージとして検索結果に表示されるため、テキスト検索に制限されなくなり、研究の到達範囲が更に広がります。
4. グラフィカルアブストラクトは興味を引く
視覚的で理解しやすいアブストラクトは、研究者だけでなく一般の読者への興味も引きます。テキストよりも画像の方がより、読者の注目を集めるとともに、色、デザインを工夫することでそこからテキストへと誘導することができます。
5. グラフィカルアブストラクトは理解しやすい
グラフィカルアブストラクトは映画のポスターのように、どんな内容かを即座に理解させることができます。優れたグラフィカルアブストラクトはテキストのアブストラクトを読むことなく、一般の読者でさえも研究の要点を理解できる力を持っています。
6. グラフィカルアブストラクトは共有しやすい
ソーシャルメディアで共有しやすい、と言うメリットに加えて、グラフィカルアブストラクトは出版物のサムネイルとしても使えます。また、グラントの申請書や研究室のウェブサイトに表示することもできるため、発表後に様々な活用ができます。
7. グラフィカルアブストラクトは研究者の共同研究の促進にもつながる
グラフィカルアブストラクトの直感的で視覚的な手がかりは、研究分野外の研究者にとっても出版物を理解しやすくします。共同研究者を探す際、グラフィカルアブストラクトはテキストに比べて自分の求めている研究内容かをより正確に判断する助けにもなります。
この様にグラフィカルアブストラクトは、著者はもとより読者、出版社など多くの人にメリットを提供します。一方で、著者にとっては今まで必要なかった新たな作業、それも図の作成ということもあり、新たな負担が発生したと考えている研究者の方も少なくはないでしょう。
エディテージのグラフィカルアブストラクト制作サービスは、あなたの論文とターゲットジャーナルをお知らせいただくだけで、投稿ガイドラインに合わせたグラフィカルアブストラクトを制作しますので、イメージの制作が不慣れな方やお時間のない方、また研究発表後により多くの方の目に触れるようにしたい、と考えている方は、ぜひこの機会にサービスをご検討ください。