XLSTAT によるTCATA 法:時間とともに変化する製品の知覚特性を記録しよう

目次

TCATA(Temporal Check-All-That-Apply)とは?

TCATA(Temporal Check-All-That-Apply)法は、製品の使用中に感じたすべての特徴を、時間の経過とともにその都度チェックして記録する官能評価手法です。CATA 法を時間軸に拡張したもので、複数の属性を同時に選択できる点が特徴です。TDS 法のように「最も支配的な特徴」を一つだけ選ぶ必要はなく、より自由に感覚の移り変わりを捉えることができます。また、TI 法のように一つの属性の強度変化を記録するのとは異なり、TCATA では複数の感覚を同時に、リアルタイムで評価することが可能です。

例えば、新開発のフルーツガムを評価したいとします。噛み始めには強烈な「フルーツの風味」と「甘味」を感じ、その後「甘味」が薄れて「酸味」が徐々に現れ、最後には「硬さ」が印象に残る、など私たちの感じ方は時間とともに変化します。TCATA 法では、このように時間の経過とともに感じられる特徴を、リアルタイムで「ある/ない」で記録します。多くの人の評価を重ねることで、どの特性がどのタイミングでよく感じられているか、全体の傾向を視覚的に把握することができます。TCATA 法を使えば、商品に対する「味の印象の変化」を、より直感的に理解することが可能になります。

TCATA 法を実行するためのデータセット

ここでは、異なる甘味料で調整されたオレンジジュースに関するデータを使用します。

50人の消費者パネルが、3種類のオレンジジュースについて、6つの属性(渋味、苦味、異風味、オレンジ風味、酸味、甘味)を20秒間にわたって評価しました。このデータは、Ares ら (2015) の研究から一部を抜粋したものです。

A列には評価者のID(1~50)、B列には製品番号(1~3)、C列には評価した属性名、D列からX列には20秒間の各1秒ごとの評価結果が記録されています。

評価はバイナリ形式(0または1)で、特定の時点でその属性が知覚された場合は「1」、知覚されなかった場合は「0」として記録されています。

このデータを用いてTCATA法を行うことで、オレンジジュースの感覚特性が時間とともにどのように変化するかを可視化し、製品間の違いを明確にすることができます。

 サンプルデータのダウンロードはこちらから

demoTCATA_JN.zip

TCATA 法の操作手順

  1. XLSTAT を起動し、[Sensory] > [時間データ分析] > [TCATA] を選択します。

  2. ダイアログボックスが表示されるので、一般タブで下記の通りデータを選択し、項目を設定します。

  3. [チャート] タブに切り替え、以下の項目を指定します。

    • 検定タイプ:
      TCATA 法では、「カイ二乗検定」と「Fisherの正確確率検定」の2つの検定方法から選ぶことができます。カイ二乗検定は計算が高速ですが、近似的な手法であるため、結果の精度はFisher 検定より劣る場合があります。一方、Fisher の正確確率検定は計算に時間がかかることがありますが、より正確な結果が得られます。そのため、評価者の人数が非常に多い場合を除き、通常はFisher検定を選択することをおすすめします。
  4. [OK] をクリックすると、計算が実行され、処理が完了すると結果が別シート(TCATA)に出力されます。

TCATA 法の結果の解釈

要約表から、3種類の製品について、50人の評価者が6つの属性を対象に、0~20秒の間で評価を行ったことが確認できます。

次に、各製品ごとに各属性の「引用率(どのくらいその属性が選ばれたか)」を示す棒グラフが表示されます。これにより、製品ごとの感覚的な特徴について、おおまかな傾向をつかむことができます。

以下は製品2の各属性に対する引用率を示すグラフです。

破線は、対応する属性について、他の製品と比較して有意差があるかどうかを示す「有意な参照線」です。引用率の曲線がこの参照線と比較して有意に高い場合、太線で表示されます。

たとえば、「オレンジ風味」は、製品2において7秒目から20秒目まで、他の製品よりも有意に多く引用されていることがわかります。

一方で、「異風味(オフフレーバー)」については、曲線が参照線より下にあるため、14秒目から20秒目にかけて、製品2での引用率が他の製品よりも有意に少ないことが示されています。

次に、製品間の属性ごとの引用率に有意差がある時間帯を示すグラフが、製品ペアごとに表示されます。

例えば、「甘味」に関しては、製品1の引用率は6秒目から20秒目にかけて製品2よりも有意に低いことがわかります。同様に、「オレンジ風味」も7秒目から20秒目にかけて有意に低くなっています。一方、「異風味」は、16秒目から20秒目にかけて、製品1の引用率が製品2よりも有意に高くなっています。

最後に、コレスポンデンス分析(CA)による「製品の軌跡」を示したグラフが表示されます。

このグラフでは、例えばグラフの右側に位置する製品2が、「オレンジ風味」や「甘味」と強く関連していることが読み取れます。

さらに、各製品が時間とともにどのように変化するかを見たい場合は、製品の軌跡の線を右クリックし、[データ系列の書式設定]>[塗りつぶしと線]>[終点矢印の種類(E)]で「→」を選択すると、グラフ上に時間の流れを示す矢印が表示されます。

また、属性を結ぶ線が不要な場合は、属性の線をクリックし、[線]>[線なし(N)]を選ぶことで、線を非表示にできます。

このグラフから、例えば、製品1は初期段階では「甘味」や「オレンジ風味」が強く感じられますが、時間の経過とともに「異風味」が目立ってくることが読み取れます。

このような感覚の変化は、前述の引用率曲線のグラフでも確認できます。

まとめ

TCATA(Temporal Check-All-That-Apply)法は、時間の経過とともに変化する製品の感覚特性を把握するのに非常に有効な手法です。XLSTAT を活用すれば、評価データの整理から可視化、製品間の有意差の検定までを効率的に行うことができます。味や香りなどの印象がどのように移り変わるのかを視覚的にとらえることができるため、食品や飲料の開発、改良、比較検証など、さまざまな場面で活用できます。ぜひ、TCATA 法を皆様の製品評価やデータ分析にもお役立てください。

参考文献

  • Analysis of temporal check-all-that-apply (TCATA) data in Excel
    https://help.xlstat.com/6485-analysis-temporal-check-all-apply-tcata-data-excel

  • Ares, G.; Jaeger, S.R.; Antúnez, L.; Vidal, L.; Giménez, A.; Coste, B.; Picallo, A.; Castura, J.C. Comparison of TCATA and TDS for dynamic sensory characterization of food products. Food Res. Int. 2015, 78, 148–158.

  • 日本官能評価学会 編, 必読官能評価士認定テキスト, 霞出版社, 2020.

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