XLSTAT による3点識別試験:製品の違いが知覚可能かどうかを評価する

目次

3点識別試験とは?

3点識別試験は、官能識別試験の一つです。官能識別試験は、複数の試料を比較し、それらの間に感覚的な違いがあるかどうかを評価する手法です。新製品開発において、消費者が新製品を「これまでにない新しいもの」と感じるかどうかを評価するために用いられます。さらに、官能識別試験は、評価を行うパネルの識別能力の確認にも役立ちます。官能識別試験の種類と使い分けについては、下記ページをご参照ください。

XLSTAT による官能識別試験の種類と使い分けについて
https://rs.usaco.co.jp/product/xlstat/tips/sensory-discrimination-tests.html

3点識別試験の設定と計画表の作成

あるアパレルメーカーで新しいワンピースの生地を商品化したいと考えており、消費者がその新製品を自社製品の生地と区別できるかどうかを判断する目的で、3点識別試験を行います。

XLSTAT の識別試験は2段階で行われます。まず一つ目に、識別試験のための実験計画を立て、次に2つの製品が区別されているかを確認するための分析を行います。今回は、20人の被験者に、異なる素材で作られた2つのワンピースの生地を比較し、手触りや風合いの違いを評価してもらいます。評価者が事前に生地を区別しないようにするために、各生地に2つのコードを割り当てます。すなわち生地1をAとC、生地2をBとDとし、下記のような表を作成しておきます。

XLSTAT での計画表の作成方法は以下の通りです。

  1. XLSTAT を起動し、[Sensory] >[官能識別検査の計画] を選択します。

  2. ダイアログボックスが表示されるので、下記項目を指定します。

    • 検定タイプ:[3点試験法] を選択
    • 審査員:20と入力
    • 列レベル(列ラベル):表には製品名が含まれているため、チェックを入れる
    • 製品コード:[ユーザー定義] にチェックを入れ、製品名の表を選択
      ※ここで、[製品ID] または[ランダム・コード] にチェックを入れると、自動で製品コードが割り振られます。
  3.  [OK] をクリックすると計算が実行され、結果が別シート(官能計画)に出力されます。

3点識別試験を実行するためのデータセット

官能計画のシートに記載された「官能識別検査の計画」の表を用いて、20人の被験者に対して3点識別試験を実施します。被験者は、表に記載されている標本1、標本2、標本3を1回ずつ試すことができます。F 列には、被験者の回答を入力します。G 列には、正解、つまり他の2つと異なるサンプルのコードが記載されており、H 列には、テスト結果が入力されます。※F 列に回答を入力すると自動的に採点され、H 列に結果が入力されます。(デフォルトでは+が正解、-が不正解)

サンプルデータのダウンロードはこちらから

Demo_triangle.zip

3点識別試験の操作手順

全ての回答が記入された表を用いて、3点識別試験を実行します。

  1. [Sensory] > [官能識別検査] を選択します。

  2. ダイアログボックスが表示されるので、下記項目を指定します。

    • 検定タイプ: [3点試験法] を選択
    • 手法: [サーストン・モデル] を選択
    • データ形式: [データ]
    • 官能識別検査の結果: [正解/不正解]  の列データを列名も含めて選択
    • 帰無仮説: [d-prime] を選択し、0を入力
    • 列ラベル:列名を含めてデータ選択しているため、チェックを入れる
    • 統計値: [Clopper-Pearson] を選択
    • 検出力: [二項] を選択
    • 検定: [差] を選択

    サーストン・モデルでは、刺激に対する被験者の反応が正規分布に従うことを前提としています。d-prime は2つの刺激をどの程度区別できるかを数値化したものです。d-prime が大きいほど2つの刺激は容易に区別でき、逆に小さいほど区別が困難になります。このd-prime が0 ということは、2つの刺激に対する区別ができないということで、この仮説を棄却することは、2つの刺激が正規分布に従わないことを意味します。つまり、2つの刺激が類似しているという仮説を棄却できます。

  3.  [OK] をクリックすると計算が実行され、結果が別シート(官能識別検査)に出力されます。

3点識別試験の結果の解釈

最初の表には、上記で選択した項目の内容と正答率が記載されています。

次に試験結果とその解釈について説明します。ここでは、p値が0.05 未満のため、d-prime=0 という帰無仮説を棄却できます。この結果は、2種類の生地が同じ正規分布に従わないことを示しています。したがって、2種類の生地の手触りや風合いが類似しているという仮説が棄却されました。さらに、今回の試験の検出力が十分に高く、試験の信頼性が高いと結論付けることができます。

次の表は、パラメータの推定値を示しています。すべてのパラメータは0を大きく上回っています。d-prime は約3であり、2つの生地の間に大きな違いがあることを示す非常に高い値です。

以上より、被験者は、新しい生地と従来の生地を区別することができました。このことから、アパレルメーカーはこの新製品が消費者に「これまでと違う新しいもの」と認められると考えることができます。

まとめ

3点識別試験は、新製品と既存製品の間に知覚可能な差異があるかどうかを判断するために、非常に有効な手段です。XLSTAT を利用することで、官能識別試験の実験計画表の作成や有意水準の確認などを効率的に行うことが可能になります。製品開発や品質管理など、様々な場面で活用できる分析手法ですので、ぜひ、3点識別試験を皆様のデータ分析にも役立ててください。

参考文献

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