XLSTAT による官能識別試験の種類と使い分けについて
官能識別試験とは?
XLSTAT のSensory のメニューにあるDiscrimination Test は、一般的には識別試験と呼ばれますが、XLSTAT の日本語メニューでは官能評価識別試験となっているので、以下、官能識別試験と呼びます。
官能識別試験は試料を比較して、差の有無を判定する方法です。例えば、新製品を発売するとき、消費者がそれを「これまでにない新しいもの」と感じるかどうかは重要なポイントです。そのため、製品の新規性を評価する手段として、官能識別試験が用いられます。また、官能識別試験はパネルの識別能力の確認にも用いられます。
官能識別試験の種類と使い分け
XLSTAT の官能識別試験には、以下のものがあります。
3点試験法(Triangle test):
2種類の試料のうち、一方のものを2個、他方のものを1個、計3個を組にして被験者に示し、異なった1個の試料を選び出させます。このとき被験者に提示する試料の組み合わせは被験者によって異なります。
1対2点試験法(Duo-trio test):
3点識別法と同様に3個の試料を被験者に示しますが、そのうちの1個を標準品として提示し、残りの2個のうちどちらが標準品と同じかを当てさせます。
2対5点試験法(Two out of five test):
2種類の試料について、一方を3個、もう一方を2個用意します。この5個を被験者に示し、2つだけ異なる試料を選び出させます。
2-AFC 試験法:
2つの試料を被験者に示し、特定の属性をより強く感じる方を選び出させます。
3-AFC 試験法:
2種類の試料のうち、一方のものを2個、他方のものを1個、計3個を組にして提示します。被験者に半端な1個が特定の属性をより強いものであることを説明し、それを選び出させます。
4点試験法(Tetrated test):
2種類の試料を2個ずつ、計4個を被験者に示し2つのグループに分類させます。
これらの官能識別試験は、試験の目的、被験者の負担、試料数などを考慮して決めます。
- わずかな差を検出したい場合
→ 3点試験法(Triangle test 3つのうち1つを識別)、4点試験法(Tetrad test 4つを2組に分類)。これらは偶然による正答の確率が低い。 - 基準と比較して識別したい場合
→ 1対2点試験法(Duo-trio test 基準と一致するものを選ぶ) - 被験者の負担を軽減したい場合
→ 特定の属性を持つ試料を選ぶ2-AFC試験法(2つから1つ)や 3-AFC試験法(3つから1つ)。 - 識別が難しい場合や経験者向け
→ 2対5点試験法(Two out of five test 5つのうち異なる2つを選ぶ)
官能識別試験のモデル
XLSTAT の官能識別試験では、次の2つのモデルを使ってパラメーターを推定することができます。目的に合わせてそれぞれのモデルを使い分けることが重要です。
- サーストン・モデル(Thurstonian model):
人の感覚には個人差があり、刺激の違いを感じ取る力にもばらつきがあると考えるモデルです。官能評価の識別試験では、被験者が感じる違いの強さを考慮しながら、結果を分析します。
→ 微妙な違いを客観的に評価したいときに - 推測モデル(Guessing model):
被験者が刺激の違いを感じ取れない場合、単に当てずっぽうで答えると考えるモデルです。識別試験では、偶然の正答率を考慮して、被験者が本当に識別できているかを分析します。
→ 消費者の好みを大まかに把握したいときに
参考文献
- Sensory discrimination tests
https://www.xlstat.com/en/solutions/features/sensory-discrimination-tests - 内田治:官能評価の計画と解析, 日科技連出版社, 2024.