XLSTAT によるMann-Kendall検定:時系列データに傾向があるか調べてみよう

目次

Mann-Kendall検定とは?

時系列分析は、時系列データの傾向や特徴を把握したり、将来の予測を行ったりするための統計手法です。その中でもMann-Kendall(マン=ケンドール)検定は、データに「時間的な傾向(増加や減少の流れ)」があるかどうかを調べるための方法です。Mann-Kendall検定の特徴は、どんな分布に従っているかを仮定しないノンパラメトリック法である点です。つまり、データが正規分布しているかどうかを気にせずに使うことができ、環境データや医療データなど、幅広い分野で応用されています。

例えば、ある地域の気温の観測データ(2000年〜2024年)を考えてみましょう。毎年の気温は冷夏や猛暑の影響で上下しますが、長い期間で見ると平均気温が少しずつ上昇しているように見えます。一方で、別の地域では年ごとの変動が大きく、上昇しているのかどうか見た目だけでは判断が難しい場合もあります。Mann-Kendall検定は、このように「傾向がはっきり見えるケース」だけでなく、「見た目ではわかりにくいケース」でも、長期的な変化の有無を統計的に確かめることができます。

この検定は、環境や医療のように「時間に沿って観測されるデータ」に広く使われます。

  • 気温や降水量の長期的変化
  • 大気汚染物質の濃度推移
  • がん発症率や生活習慣病患者数の増減
  • 検査値(例:HbA1cや血圧)の経年変化

Mann-Kendall検定を実行するためのデータセット

ここでは、糖尿病のリスクを判定するための指標である HbA1c を想定したデモデータを使用します。
データは、2000年1月から2024年12月までの月次観測値(300点)で構成されており、長期的な変化を確認できるようになっています。
A列には観測年月(例:Jan-00, Feb-00, …)、B列にはHbA1c(%)が記録されています。

このデータを用いてMann-Kendall検定を行うことで、短期的なばらつきや季節変動を含みつつも、全体としてHbA1c が上昇傾向にあるのか、あるいは下降しているのかを統計的に調べることができます。

サンプルデータのダウンロードはこちらから

demoMK_medical.xlsm

Mann-Kendall検定の操作手順

  1. XLSTATを起動し、[Forecasting] > [時系列分析] > [Mann-Kendall傾向検定] を選択します。

  2. ダイアログボックスが表示されます。

    • [一般] タブの[時系列] にはB列(HbA1c)を選択します。
    • [日付データ] にチェックを入れ、A列(年月)を指定します。
    • 一行目にラベルが含まれているので、[系列ラベル] にチェックを入れます。

    【Mann-Kendall検定の種類】

    • XLSTATには、
      • 季節性を考慮しない 従来のMann-Kendall trend test
      • 季節性を考慮する Seasonal Mann-Kendall検定の2種類があります。
    • 今回は Seasonal Mann-Kendall検定を選び、[期間] に 12(=月) を入力します。これは「毎年1月どうし、2月どうし…と同じ月を比べる」という意味で、1年ごとに繰り返す周期を12か月として指定するものです。
    • Seasonal Mann-Kendall検定を選んだ場合のみ、[系列依存性] オプションを指定できます。時系列データでは、前後の月が独立ではなく関連していることが多いため、このオプションを有効にしておくと、月ごとの関連性を考慮した検定が行えます。

  3. [オプション] タブで、対立仮説として「タウ ≠ 0」を選択します。

    • XLSTAT は、p値を計算する際に正規近似を用いて Kendallのタウ統計量の分布を推定します。
    • 必要に応じて「連続修正」を適用することもできます。

  4. [OK] ボタンをクリックすると、計算が実行され、結果が別シート(Mann-Kendall傾向検定)に出力されます。

Mann-Kendall検定の結果の解釈

出力結果の最初には、データの基本統計量(平均値や標準偏差など)と、Mann-Kendall検定の結果が表示されます。

ここでは、データが「12か月ごとの季節性を持つ」ことを前提にしています。つまり、毎年同じ月には似たパターンが出る可能性を考慮した上で、長期的な増加や減少の傾向があるかどうかを調べています。

この例では、p値が非常に小さい(<0.0001)という結果が得られました。このことから、「傾向はない」という帰無仮説を統計的に棄却できる、すなわち 季節性の影響を取り除いても、データには有意な上昇または下降の傾向が存在する と判断できます。

加えて、出力には次の指標も含まれています。

  • Kendall のタウ(例:0.743):
    傾向の方向と強さを示す指標で、1に近いほど強い上昇傾向、-1に近いほど強い下降傾向を意味します。この値から、データには強い上昇傾向があることがわかります。

  • Sen のスロープ(例:0.024):
    傾向の大きさを表す指標で、「1年あたり平均0.024(単位)増加している」というように具体的な増加量を示します。実務での解釈に直結するため、特に重要です。

まとめ

Mann-Kendall検定は、時系列データに長期的な増加や減少の傾向があるかどうかを統計的に検証するための手法です。データがどのような分布に従っているかを仮定しないノンパラメトリック法であり、短期的なばらつきや季節的な変動の中から、全体的なトレンドの有無を明らかにできるという特徴があります。この方法は、気象や水文の観測データだけでなく、医療分野における検査値や疾病統計の経年変化など、幅広い領域で利用されています。
複雑な時系列データの中に潜む傾向を見極めることで、研究や実務における意思決定に役立つ有効なアプローチとなります。

参考文献

  • Sen, P. K. (1968). Estimates of the regression coefficient based on Kendall's tau. Journal of the American Statistical Association, 63(324), 1379-1389.

  • Hirsch R.M., Slack, J.R., and Smith R.A. (1982). Techniques of trend analysis for monthly water quality data. Water Resources Research, 18, 107-121.

  • Kendall M. (1975). Multivariate Analysis. Charles Griffin & Company, London.

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