静岡県立こども病院 塚田薫代様 - インタビューの分析と学会発表での視覚化にNVivoを活用
医学図書室の司書の傍ら、患者図書サービスわくわくぶんこを主宰されている司書の塚田薫代様に、学会発表でのNVivoの視覚化とその活用方法についてお話を伺いました。
塚田様の研究内容
先天性心疾患の手術をして循環器集中治療室に入院しているお子さんたちに、集中治療室の中で絵本を朗読し、その影響について保護者の方にインタビューをおこないました。そして、そのインタビューを質的に解析するという研究です。
絵本朗読をすると、保護者から非常にポジティブな反応が出ているというのを経験で知っていました。絵本朗読でどのような影響が出たかを質的に明らかにするというのが目的です。
これは第55回日本小児循環器学会、多領域専門職部門にて口頭発表しました(2019.6.29)。
付箋では難しかったカテゴリー分類が楽にできる
--NVivoを選んだ理由はなんだったのでしょうか。
質的研究の研究手段はいくつかありますよね。グラウンデッド・セオリーとか現象学とかいろいろあります、NVivoを使ったのは客観的にデータを分析できるという点 、それと視覚的に非常に効果的な分析ができるという点、あとはやはり効率的であるという点です。
付せんを貼って分類していくよりも、単語をカテゴリーにサッサと入れていって、後でまとめて、いろいろ加工できるというようなところがとても便利でした。
--効率化できるというお話をうかがいましたが、NVivoを導入される前はどういうふうにされてたんでしょうか。
付箋でKJ法みたいな感じで切り分けていました。すごい時間がかかりましたね。試行しているうちにこれどっち?とか、重複する概念もあって、それをどうやって分類していこうかなっていう。最後にまとめるのもやっぱり時間はかかりました。
(NVivoを使用すると)自分で分類をしていくうちに新たなカテゴリーを追加していくことも簡単ですし、やっぱりこれ違うこっちだわっていう修正も楽でしたね。
視覚的に伝えるというのはとてもインパクトがある
--視覚的に分析できるメリットはなんでしょうか。
ひとつは感情の自動コーディングです、ネガティブ・ポジティブが客観的にコーディングされて一目瞭然です。
円グラフや棒グラフで何パーセントでしたっていうのも、もちろんいいのですが、パッと見てイメージとして捉えやすいですよね。
特に短時間のプレゼンには非常に有効でした。文章や口頭で言うよりも、もうパッと見てもらうと印象として伝わる。それがとても良かったです。
(今回の口頭発表は)発表6分、質疑応答3分と非常にタイトです。だからこの視覚的に伝えるというのはとてもインパクトがあって良かったです。
--NVivo以前ではこういったグラフを出力されることっていうのはあったんでしょうか。数字を表計算ソフト上で手打ちして、グラフを貼るみたいな。
そうですね。何パーセントとかいう円グラフとか棒グラフでその割合を表してはいました。(表計算ソフトでは)それをいちいち修正するのがとても面倒でした。それに、グラフだけだと2次元はうまく表現できるんですが、奥行きを持って全体のボリュームが見られる手応えとでもいいますか、3次元の立体的なイメージにある質量を感じる、そういうのはちょっとできない 。
頻出語クエリについては、参加者の属性によっての特色を探るという目的で使用しました。例えば、第1子のお子さんと第2子、第3子では何か違うのか、お父さんとお母さんではどうかなどです。
※本ページのNVivoの画像は、塚田様が実際に発表で使用された資料の一部を許可をいただいて掲載しています。
センシティブな質的データにはパスワードが欠かせない
もし共同研究者がいたら、その内容を共有するという面で(NVivoの使用は)非常に有利かなと思います。私は今回単独でしたけれども、共同研究者同士でこういう質的な内容を共有するというのには非常に有効ではないかなと思います。
看護研究で重要なのは倫理的配慮です。個人情報を含む研究データは第3者が閲覧できないようパスワード管理できるという点は、看護管理者から評価を受けました。
--そうですね。例えばUSBとかメールでデータを送ってもパスワードを別の形で先方様にお送りすればデータだけでは開けないようにできますね。
使ってみて、手を動かしてみたら想定外のアウトカムが何か見つかるかもしれない
--NVivoを使い始めようとする人に何かアドバイスがありましたらいただけますでしょうか
最初、NVivoが自動的に質的解析をやってくれるのだと思っていました(笑)最終的には、やっぱり研究者が解析しないとダメなんだなっていう点は、知っておいていただきたいですね。NVivoの図だけを出して研究とは云えません。
まず使ってみて、手を動かしてみて、感覚的にこうかこうかとやって、先入観なく使っていただけたら、きっとイメージしてないような使い方もきっとあるのではと思います。
逆もまた真なりと申しましょうか、NVivoの結果から新たな発想もきっと出てくるし、想定外のアウトカムが何か見つかるのかもしれないですね。
塚田薫代様プロフィール
地方独立行政法人 静岡県立病院機構
静岡県立こども病院 医学図書室/わくわくぶんこ
司書 塚田 薫代
1993年より現職
医学図書室の傍ら、患者図書サービスわくわくぶんこを主宰