インタビュー

EndNote、3つの誤解

聖路加国際病院 診療教育アドバイザー 関口 建次 先生

 私はEndNoteを愛してやまない一人ですが、同僚や後輩たちとEndNoteが話題になるとかなり誤解されている気がしてなりません。三つほど取り上げてみます。

ひとつ、「あれって論文を書くときに便利なやつでしょう。(普段はいらないよね。)」
ふたつ、「あれって取っつきにくいよね。(便利って、聞いてるけど、)」
最後は「あれって高いよね。(最近は無料ソフトもあるし、)」

心当たりがあれば、次を読んで下さい。

ひとつめ
EndNoteは和洋にかかわらず、論文を書くときに参考文献が簡単に作成できて便利です。でもそんなことって一年に何回もはないでしょう。私がほぼ毎日使っているのは自分用の文献データベースとしてです。連日入ってくる興味ある医学情報(雑誌論文)をPubMedから取り込み、自分なりのkeywordsを思いつくまま割り当て、せいぜい数行程度の抄録をつけて PDF化されたオリジナル文献とともに整理するのです。最近はPDFをドロップするだけで書誌情報を取得できるようになっています。
ここで大切なのは自分で考えたkeywordsと超簡略和文抄録です。この2つで自分の目当ての文献(PDF)を効率よく、探し当てることができます。その文献を思い浮かべるkeywordsは独特でも個人の思考回路は特有なので、再現性があるのです。MESHでは特定できません。医局抄読会で同僚(山田氏)が紹介したものなら”JC”とか、”山田”とか何でも手当たり次第に入力するのがコツです。

ふたつめ、
この種の誤解も良く聞きます。中には買ったけど難しくて使っていない人もいました。確かに色々な機能がありすぎて、複雑にみえます。逆に言えば一度、自分仕様にチューニングすればあとはほとんど使わない機能です。この自分仕様というのがとても大切なのです。
例えばライブラリー一覧画面を項目やフォントサイズなど自分の好みに合わせて表示することができるのです。私は一覧で著者、報告年、タイトルだけが見えるレコードの移動に合わせて、下段には前述の自分の言葉による和文抄録とPDFを表示しています。一度、レイアウトを決めればもう変える気がしません。あとは毎日、同じ作業、PDF+keywords +超簡略抄録 です。少々面倒でもこの作業を通して文献が自分の持ち物になるのです。PubMedの書誌情報+PDFだけなら在庫が多くなってくるともうたどり着けません。

みっつめ、
確かに最近はよくできた無料ソフトもある中、安くはありません。ここでコスト・パーフォーマンスという言葉を思い出して下さい。確かに年に数回、論文を書くときにだけ使うなら無料ソフトで十分です。私も確認しましたが、論文誌筆に必要な大抵のことはできます。しかし初めは無料でも容量が大きくなると有料になることもあるので確認が必要です。私の場合EndNoteをほぼ25年使っていますが、10GB近くの容量を必要としています。毎日使うソフトで便利なら、決して高くはないでしょう。例えばマイクロソフト・オフィスも安くはないですが、皆さん、お持ちだと思います。またユサコの日本語操作ガイドは長年の経験を生かしてとてもわかりやすく、痒いところにまで手が届くように書かれているのも強みです。

以上、EndNoteの魅力はまだまだ語り尽くせませんが、最近、特に感じている便利さを2つほど紹介します。ネイティブ・スピーカーでない我々が英語で論文を執筆するときには「自分で英作文」ではなく「英借文が良い」と聞いたことがあります。EndNoteでメジャーな雑誌のPDFの中から同じ表現を探し出して、言い回しを借りてくることは洗練された科学論文作成に役立ちます。また学会活動の一環として診療ガイドラインの原稿作成に際し、委員相互でチエックするときに共有ライブラリーから直接オリジナル文献や日本語サマリーをみることができ、時間節約になっています。

以上のように記憶力が昔ほど確かでなくなっている昨今では、私にとってEndNoteはますます診療、研究、教育をする上で必須のツールとなっております。

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