エディテージ x ユサコの論文執筆ヒント集

Vol.48:高品質な英語論文を書くためのヒント5選

査読付き国際誌(大半は英語で出版されている)に論文が掲載されることは、研究者としての信頼を確立するために達成すべきタスクの1つです。しかし、そのハードルは決して低くなく、一流誌の不採択率は90%、平均的なジャーナルでも50%程度と言われています。

学術論文の採択・不採択を決定づける最大の要因は研究の新規性や有益性といった内容の部分であるのは当然ですが、その内容が言語(英語)的に正しくかつ分かりやすく書かれているかどうかも重要な要素の1つなのです。

しかし、非英語圏の研究者にとって、英語で自分の研究を正確かつ分かりやすく論文にまとめるのは一筋縄ではいかない作業となるでしょう。実際、言語の問題で論文が不採択になるケースも決して珍しくありません。

したがって、非英語圏の研究者が英文誌で論文を出版するためには、研究の質だけではなく言語の質にも注意を向けなければなりません。

この記事では、日本の研究者が英語論文を書くためのヒント5点に焦点を当て、まとめています。


1. 「翻訳剽窃」に注意する

日本の研究者の場合、過去に和文誌で出版した論文を英語に翻訳したものを英文誌に投稿するということが起こり得ります。しかし、これは「翻訳剽窃」または二重出版と見なされ、トラブルに発展する可能性があります。

日本語で出版済みの論文の翻訳版を英文誌に投稿する場合は、出版元の和文誌と投稿先のジャーナルに必ず確認するようにしましょう。原稿の一部を修正することで出版が許可されるケースもありますが、その場合でもそれが二次出版であることは明記する必要があるでしょう。

二重投稿や許容される二次出版の詳細はICMJEのガイドラインを確認してください。


2. 英語論文をたくさん読む

英語の論文を読むことで英語の論文を書くための語彙力が鍛えられるので、定期的にこれらを読む習慣を身に付けましょう。

単純に興味のあるテーマのものでも構いませんが、自分の専門分野の論文や研究テーマの先行文献などを読むことで、自分が書くべき論文の書き方やデータの示し方、よく使われる用語・表現などを把握することができるようになるでしょう。


3. 英語と日本語の違いを理解する

たとえば、日本語では理由や事実を述べた後にそれらを結び付ける「結論」を書くのに対し、英語では結論となる「トピックセンテンス」で文章を始め、その後にその理由をつなげるのが一般的です。以下に簡単な例文を紹介します

日本語:「AのXXX特性はBよりも高かったため、触媒としてはBよりもAが優れている。」

英語:「A was better as a catalyst than B because the XXX property of A was higher than B.」

このように、英語と日本語は単に単語や文法が異なっているだけでなく、文章の組み立て方も異なっています。それを理解せずに日本語の発想のまま英文を書いてしまうと、そのような構成に慣れていない英語ネイティブの読者を混乱させてしまうことになるかもしれません。


4. 能動態と受動態

英語論文において、能動態と受動態をどのように使い分けるべきか、あるいはどちかに統一すべきなのか、といった議論は昔から行われています。

能動態は行為者を強調する文体であり、受動態は行為者が登場せず非人称的である代わりに冗長で分かりにくくなりがちな文体です。

伝統的に、科学文章は「I」や「we」などを使用しない受動態が好まれてきましたが、近年では「研究論文とは分かりやすいものでなければならない」という考えのもと、米国医師会(AMA)や米国心理学会(APA)をはじめとする学術団体が能動態の使用を奨励するケースが増えています。

とは言え、ターゲットジャーナルがどちらかの使用を禁止していない限り、どちらの文体を使うかは論文のセクションや何を強調したいかによって使い分けるのがよいでしょう。

能動態と受動態の使い分けについては次の記事で詳しく解説されています。


5. 時制

英語の時制の使い分けに苦労する人も多いのではないでしょうか。科学論文で使うべき時制は、IMRaD形式のセクションごとに異なり、たとえば、イントロダクションでは単純現在形、結果と考察では過去形で書くのが一般的です。

時制の使い方については、来月の記事で更に詳しく説明します。

 
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