NVivo のマインドマップ機能で研究のアイデアを整理・分析しよう

目次

マインドマップとは?

NVivo のマインドマップは、研究テーマやコンセプトに関するアイデアを自由に書き出し、視覚的に整理するためのブレインストーミングツールです。中心となる一つのトピックから関連するアイデアを放射状に広げていくことで、思考を整理し、新たな着想を得ることができます。

プロジェクトの初期には漠然としたアイデアや仮説を探るために、分析が進んだ段階では作成したコードの体系を整理・確認するために役立ちます。このページでは、マインドマップの基本的な使い方から分析作業を効率化する応用テクニックまでを分かりやすく説明します。
※なお、このページではNVivo 15 Windows 版を使ってご説明しております。

マインドマップを作成するタイミング

マップは、リサーチクエスチョンの設定から、分析、理論の構築、そして結果の発表に至るまで、プロジェクトのどの段階でも作成できます。

  • プロジェクト初期
    研究の出発点や前提条件についてブレインストーミングします。概念をテーマごとに整理し、コードの階層構造の土台を構築します。

  • 分析の途中
    新しいコードを発想します。既存のコードを掘り下げて細分化したり、逆に複数のコードをまとめる上位コードを考えたりします。データの中で人々が使う言葉を探り、分析の抜け漏れがないか確認します。

  • 結果の発表時
    分析結果をどのようにストーリーとして伝えるか、発表の構成を計画します。

マインドマップの作成手順

ここでは、看護学の研究を想定し「ベテラン看護師の離職意向に関連する要因」というテーマを例に、インタビューデータの分析初期段階で思考を整理していくプロセスをご紹介します。

  1. メニューの [探索] タブから[マップ] > [マインドマップ] を選択

  2. マインドマップの名前(例:「ベテラン看護師の離職意向要因」)を入力して、[OK] をクリック

    マップが作成され、名前がブランクのアイテムが追加されます。

  3. 中心となる主要なアイデアに「ベテラン看護師の離職意向」と入力

  4. 続いて離職意向の背景にある大きな要因を「子アイデア」として追加します。マップ上のアイテムを選択した状態で、メニューの [マインドマップ] タブの[子アイデア] をクリック(またはキーボードの [Insert] を押下)

  5. 追加された「子アイデア」に名前を入力(例:「ワークライフバランスの困難」)

  6. 続いて、同じ階層に他のカテゴリ(「キャリアの停滞感」、「心身の疲弊」、「職場環境への不満」など)を追加します。手順5 で追加したカテゴリを選択した状態で [兄弟アイデア] をクリックします。(または、キーボードの [Enter] を押下)

    これを繰り返して主要カテゴリを並べます。

  7. さらに、下位の要素を追加したいカテゴリ(例:「心身の疲弊」)を選択し、再度 [子アイデア] をクリックすることで、具体的な要素(「夜勤による身体的負担」など)を追加し、階層構造を作成します。

    • 「心身の疲弊」から
      • 「夜勤による身体的負担」
      • 「共感疲労」
      • 「インシデントへの精神的ストレス」
    •  「職場環境への不満」から
      • 「若手との価値観のギャップ」
      • 「正当に評価されない人事制度」
  8. まだどこに分類すべきか明確ではないものの、重要だと思われるキーワードは「フローティングトピック」として書き出しておきます。(例:「看護管理職へのプレッシャー」)

このようにインタビュー内容を構造化することで、複雑な要因を視覚的に整理できます。

レイアウトとデザインのカスタマイズ

作成したマインドマップは、見やすいようにレイアウトやデザインを自由に変更できます。思考を整理する段階や、プレゼンテーション用に整える際に活用しましょう。これらの設定はすべて「マインドマップ」タブから行います。

レイアウトの変更

マップ全体の構造を、目的に合わせて最適な表示形式に切り替えることができます。


マインドマップ形式:
中心から左右にアイデアが広がる標準的なレイアウトです。自由な発想を促したい時に適しています。


トップダウン形式:
組織図のように、アイデアが上から下へと階層的に表示されるレイアウトです。概念の上下関係や構造を明確に示したい場合に便利です。


左右形式:
中心トピックが左端に配置され、そこから右方向へアイデアが階層的に展開していくレイアウトです。プロセスフローや時系列、原因と結果といった一方向の関係性を示すのに適しています。

色、形、フォントの調整

変更したいアイデア(図形)を選択してから、リボンメニューの各項目を調整します。

  • 塗りつぶし・境界の色・境界の幅:
    カテゴリごとに色分けをすると、マップ全体の構造が視覚的に理解しやすくなります。

  • フォント:
    フォントの種類、サイズ、太字などを変更できます。中心トピックを大きくしたり、特に重要なキーワードを太字に変えたりすることで、マップの要点を際立たせることが可能です。

マインドマップからコードを作成する方法

マインドマップの最大の利点の一つは、整理したアイデアをワンクリックで分析用の「コード」に変換できることです。これにより、思考の整理から実際のコーディング作業へシームレスに移行できます。

  1. 完成したマインドマップを開いた状態で、マインドマップタブを選択

  2. [コードまたはケースとして作成] をクリック

  3. コードの作成場所を指定して、[OK] をクリック

この操作により、マインドマップの階層構造(親子関係)がそのままコードとして作成されます。例えば、事例では「心身の疲弊」という親コードの下に「共感疲労」などの子コードが自動で作成され、すぐにデータ分析に利用できます。

【注意】コード作成後のマップ編集について

マインドマップからコードを作成すると、その時点のマップの構造をもとにコードが生成されます。一度コードとして作成された後は、マインドマップとコードはそれぞれ独立したものとなり、連携はしません。例えば、コード作成後に元のマインドマップ上のアイデアの名前を変更・追加・削除しても、すでに作成済みのコードには一切影響しません。コード体系を変更したい場合は、リストビュー上で直接コードを編集する必要があります。

作成したマップの保存場所と再編集

作成したマインドマップは、ナビゲーションビューの[ビジュアル化] > [マップ] フォルダに保存されます。フォルダ内に保存されているマインドマップをダブルクリックすると、詳細ビューで再び表示できます。

再編集時の注意点

再度開いたマインドマップは、デフォルトでは閲覧モードになっています。内容を編集したい場合は、詳細ビューの左上にある「編集」のチェックボックスにチェックを入れる必要があります。チェックを入れると、アイデアの追加やデザインの変更が可能になります。

まとめ

NVivo のマインドマップ機能は、研究者の自由な発想を促して思考を視覚的に捉え、複雑な概念や関係性を分かりやすく構造化することができます。そして、そのプロセスを通じて質的データ分析の要であるコード体系の土台を効率的に構築できる点が、この機能の最大の強みと言えるでしょう。研究の初期段階から分析まで、プロセス全体を力強くサポートするマインドマップを、ぜひご自身のプロジェクトで活用し、分析の質と効率を高めてみてください。

参考ページ

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