NVivo コーディングクエリ活用法:条件を指定して必要な情報を抽出しよう

目次

コーディングクエリとは?

コーディングクエリとは、設定した条件に基づいて、コーディング済みのデータの中から特定の箇所を検索・抽出する機能です。例えば、10人、20人とインタビュー対象者が増えてくると、特定のテーマや条件に合う発言を探し出すだけでも大変な作業になります。コーディングクエリは、そうした手作業では時間のかかる複雑な検索を、ボタン一つで瞬時に実行してくれます。

コーディングクエリでできることの例:

  • 特定のテーマに関する意見の抽出
    例:「『公園の安全性』について言及している箇所をすべて見たい」

  • 複数のテーマの関連性を探る
    例:「『水質』と『不動産開発』の両方について語られている箇所を調べたい」

  • 特定の属性を持つ人の意見を絞り込む
    例:「30代の女性は、新しい制度についてどう考えているか?」

  • 条件を組み合わせて、より複雑な問いに答える
    例:「A地区に住む子育て世代の会社員は、公園の『安全性』と『施設の要望』について何を語っているか?」

このように、コーディングクエリは自身の問い(リサーチクエスチョン)を検証し、データに潜むパターンを発見する場面で活用することができます。このページでは架空のインタビューデータを使ってコーディングクエリが実際にどのように活用できるのかを、手順を追って分かりやすく解説します。
※なお、このページではNVivo 15 Windows 版を使ってご説明しております。

データセットの説明

今回は10名の住民にインタビュー調査を行ったという想定のデータセットを使用します。

【調査概要】
自治体が計画中の公園について、地域住民10名にインタビュー調査を実施。

【NVivo での設定】
 NVivo には、以下のアンケートデータがインポートされ、発言者ごとにケースが作成されています。また、各ケースには「年齢層」「居住地区」「子供の有無」「性別」「職業」という属性が設定され、発言内容に応じていくつかのコードでコーディング済みであると仮定します。

サンプルデータのダウンロードはこちらから

sample-data-for-coding-query.zip

アンケートデータ(Excel)のインポート方法は下記セミナー動画をご参照ください。

NVivoオンラインセミナー:アンケートデータ分析編

コーディングクエリを実行する手順

コーディングクエリの使い方を3つのシナリオで見ていきましょう。

シナリオ1:複数のテーマの関連性を探る

Q:「住民は『施設の要望』と『安全性への懸念』をどのように関連付けて語っているか?」

まずは、異なるテーマがどのように関連しているかを探る使い方です。ここでは、「施設の要望」と「安全性への懸念」という2つのテーマ(コード)が同時に語られている箇所を検索し、その関係性を探ってみましょう。

操作手順

  1. メニューの[探索] タブの虫眼鏡アイコンをクリックし、[コーディング] を選択

  2. [選択したすべてのコードまたはケース] の右側の [...] ボタンをクリック

  3. コードの一覧から「安全性への懸念」と「施設の要望」コードを選択して[OK] をクリック

  4. 画面上部の [クエリを実行] をクリック

出力結果

10名の中から4名の発言の、両方のコードが重なっている部分だけが抽出されます。

この結果は、住民の多くが「施設の要望(期待)」と「安全性の懸念(リスク)」を表裏一体のものとして捉えていることを強く示唆しています。単に新しい施設を作るだけでなく、それがもたらすかもしれない負の側面(夜間の危険、マナー問題、犯罪の温床、事故)への対策をセットで講じなければ、住民の満足は得られない、という重要な洞察が得られます。

シナリオ2:特定の属性を持つ人の意見を絞り込む

Q: 「A地区に住む住民は、公園の安全性についてどのような懸念を抱いているか?」

次に、特定のグループの意見に焦点を当てる、応用的な使い方です。ここでは、「A地区の住民」という属性で絞り込み、彼らが「安全性」という特定のテーマについて何を語っているかを検索してみましょう。

操作手順

  1. メニューの[探索] タブの虫眼鏡アイコンをクリックし、[コーディング] を選択

  2. [選択したすべてのコードまたはケース] の右側の [...] ボタンをクリック

  3. コードの一覧から「安全性への懸念」コードを選択して[OK] をクリック

  4. [+] ボタンをクリックして条件を追加

  5. 2つ目の条件を[以下の条件に該当するすべてのケース] に変更

  6. 右側の [...] ボタンをクリック

  7. [ケースの分類] からケースの属性「居住地区」を選択し、[OK] をクリック

  8. [値に等しい] を選択し、[A地区] を設定

  9. 画面上部の [クエリを実行] ボタンをクリック

出力結果

10名の中から条件に合う5名の発言だけが抽出されます。

ファイル名のリンクをクリックすると、元のアンケートデータにアクセスし、どの回答者によるデータなのかを確認することができます。

この結果から、A地区の住民は、夜間の暗さ(防犯)、若者のマナー、施設の老朽化(管理)、物理的な危険(死角、段差)など、多様な観点から安全性を懸念していることが一目でわかります。特に、高齢層(#002, #010)はマナーや身体的な安全を、若年・中年層(#001, #008)は防犯面の安全をより意識している、といった世代間の傾向の違いを仮説として立てることもでき、さらなる分析の糸口となります。

シナリオ3:条件を組み合わせて、より複雑な問いに答える

Q:「A地区に住む『子供のいる』親のうち、職業が『会社員』または『主婦』の人は、『公園への期待』または『施設の要望』について何を語っているか?」

最後に、複数の属性とテーマを自在に組み合わせる使い方です。ここでは、複数の属性で特定の人物像を定義し、その人々が特定の複数のテーマについて語っている内容をピンポイントで抽出してみましょう。「居住地区」「子供の有無」「職業」という3つの属性と、「公園への期待」「施設の要望」という2つのコードを組み合わせた、複雑なクエリです。これを手作業でやろうとすると、見落としや間違いが起こりがちですが、コーディングクエリなら正確に実行できます。

操作手順

  1. メニューの[探索] タブの虫眼鏡アイコンをクリックし、[コーディング] を選択

  2. まずは「公園への期待」または「施設の要望」いずれかのコードという条件を指定します。[選択した任意のコードまたはケース] に変更し、右側の [...] ボタンをクリック

  3. コードの一覧から「公園への期待」と「施設の要望」のコードを選択して[OK] をクリック

  4. [+] ボタンをクリックして条件を追加

  5. 2つ目の条件を[以下の条件に該当するすべてのケース] に変更

  6. 右側の [...] ボタンをクリック

  7. [ケースの分類] からケースの属性「居住地区」を選択し、[OK] をクリック

  8. [値に等しい] を選択し、[A地区] を設定

  9. 上記手順4~7の操作を再度行い、属性「子供の有無」が「あり」である条件を追加

  10. 一番下の条件の右端の下向きの矢印ボタンをクリックし、[グループを追加] を選択

  11. 追加された条件の[すべて] を「[任意] の条件に当てはまる」に変更

  12. 以下のように属性「職種」が「会社員」と「主婦」である条件を追加

  13. 画面上部の [クエリを実行] ボタンをクリック

出力結果

この複雑な条件に合致するのは、10名のうち2名です。クエリは、この2名の該当箇所だけを正確に抜き出してくれます。

この結果から、「A地区在住で子育て中の会社員・主婦層は、子供の安全を前提とした上で、利便性(駐車場)や遊具の充実に強い関心がある」という、非常に具体的な示唆を得ることができます。

補足事項:結果をさらに活用する

クエリを実行した後、その結果を保存しておくことで、後の分析がさらにスムーズになります。

結果をコードとして保存する

クエリ結果は非常に価値のあるデータです。詳細ビューの上部にある [結果を保存] をクリックし、新しいコードとして保存することをおすすめします。例えばシナリオ3 の結果を「A地区_子育て現役層の期待・要望」という名前でコード化すれば、後の分析でこの特定層の意見をまとめて参照したり、他のグループとの比較に使ったりする際に非常に便利です。

クエリ条件を保存する

同じ条件のクエリを繰り返し実行する場合は、[条件を保存] をクリックしておくと、いつでも設定を呼び出してクエリを再実行できます。分析の過程でデータが追加・修正された場合でも、ワンクリックで最新の結果を得ることができます。

まとめ

コーディングクエリは、大量の質的データの中から、様々な問いに合致する重要な部分だけを的確かつ迅速に抜き出す非常に便利な機能です。データ量が増え、分析の切り口が複雑になるほど、その真価は発揮されます。分析者は面倒な検索作業から解放され、抽出された結果の解釈という、より創造的な分析に集中することができます。ぜひご自身のプロジェクトでコーディングクエリを活用してみてください。

参考ページ

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