インタビューデータは質的研究において欠かせない要素です。しかし、各データを単なる文章として読むだけでは、データ間に隠されたパターンや関係性を発見するのは困難です。
NVivo では、それぞれのインタビューデータに「ケース」を作成し、年齢、性別、職業、居住地といった回答者の属性情報を追加することが可能です。また、設定した属性情報を利用し、データ分析をより深く、多角的に行うことができるようになります。
このページでは NVivo でインタビューデータのケースを作成し、そこに属性を追加する方法と、その活用方法を解説します。
インタビューデータの属性を使いこなし、研究の質をさらに高めましょう。
※なお、このページではNVivo 15 Windows 版を使って説明しています。
インタビューファイルのインポートとケースの作成
ここでは、インタビューファイルをNVivo にインポートし、分析の単位である「ケース」を作成します。
ケースの作成には、ファイルをインポートする際に行う方法と、インポート後に行う方法の2通りがあります。
方法A:インポートと同時にケースを作成する(推奨)
これからファイルをインポートする方には、この方法が最も効率的でおすすめです。ファイルのインポートとケースの作成を一度の操作で完了できます。
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ナビゲーションビューの [ファイル] を右クリックし、[新規フォルダ] を選択
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出現した画面の名前欄に任意のフォルダ名(例:インタビュー)を入力し、[OK] をクリック
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ナビゲーションビューの [ケース] を右クリックし、[新規フォルダ] を選択
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出現した画面で名前欄に任意のフォルダ名(例:インタビュー人物)を入力し、[OK] をクリック
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メニュー [インポート] タブ から [ファイル] をクリック
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インポートするファイルを選択し [開く] をクリック(複数選択可)
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[インポートした各ファイルのケースを作成] にチェックを入れ [新規分類を作成] を選択し分類名(例:インタビュー人物)を入力
[変更] をクリック -
手順 4. で作成したケースフォルダを選択して [OK] をクリック
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[インポート] をクリック
この操作だけで、ファイルのインポートと、それに対応するケースの作成が同時に完了します。
【注意】
- ファイルごとにケースを作成し属性を追加するので、複数人のインタビューをまとめたファイルは使用できません。ファイルは対象者につき1つ用意してください。
- ファイル名がケース名になります。ファイル名は後で管理しやすいように「回答者A」「ID-001」といった名称にしておくことをおすすめします。
方法B:インポート済みのファイルからケースを作成する
インポート時にチェックを入れ忘れた場合や、すでに取り込み済みのファイルからケースを作成したい場合は、以下の手順で行うことができます。
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ナビゲーションビューの [ケース] を右クリックし、[新規フォルダ] を選択
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出現した画面の名前欄に任意のフォルダ名(例:インタビュー人物)を入力し、[OK] をクリック
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ナビゲーションビューの[ファイル] フォルダを選択し、リストビューにてケースを追加したいインタビューファイルを全選択
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右クリックし、[種類を指定して作成] から [ケースとして作成] をクリック
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出現した画面にて手順 2. で作成したケースフォルダを指定
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[分類に割り当て] は [(なし)] のまま [OK] をクリック
作成したケースは、ナビゲーションビュー [ケース] 下に作成したフォルダを選択することでリストビューに表示され、確認することができます。
属性シートの準備
手入力で属性を追加することもできますが、インタビュー対象者の属性をまとめたExcel シートを用意していただくことで、より簡単に追加することが可能です。
<属性シートの例>
【注意】
- シートは1枚のみ
1つのExcel ファイル内に複数のシートを作成しないでください。 - 1行目には属性項目
1行目には「年齢」「性別」「職業」などの属性名(ヘッダー)を記載します。 - A列には対象者のインタビューファイル名
A列には、NVivo にインポートしたファイル名と完全に一致するケース名を記載してください(例:「回答者A.docx」なら「回答者A」)。ここが一致しないと、属性情報が正しく紐づけられません。
属性の追加
属性シートを利用した属性の追加方法は以下のとおりです。
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メニュー [インポート] タブ から [分類] → [分類シートをインポート] をクリック
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インポートウィザード画面にて [参照] をクリック
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インポートする Excel ファイルを選択し [開く] をクリック
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[次へ] をクリック
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[分類タイプ] を [ケース分類] に変更し、その他の項目にすべてチェックを入れ [次へ] をクリック
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[名前として] を選択し、[選択] をクリック
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ケースが保存されているフォルダを選択し、[OK] をクリック
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[存在しない場合は、新しいケースを作成] にチェックが入ったままで [次へ] をクリック
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必要に応じて日付等の表示形式を設定し [終了] をクリック
追加した属性はナビゲーションビュー [ケース] 下の [ケースの分類] から選択することで確認することができます。
クロス集計
追加した属性情報を活用し、クロス集計を行ってみましょう。
クロス集計を行うことで、単純に「あるテーマについてどれだけの言及があったか」を見るだけでなく、「どのような属性を持つ人々が、そのテーマについて言及しているか」という属性ごとの違いや傾向を明らかにできます。
質的なコーディング結果と、量的な属性データを関連付けることで、質的研究に「数」という説得力のある要素を加え、分析の客観性や信頼性を高めることができ、混合研究法の際にも特に有用です。
また、集計結果から予期せぬパターンや差異が発見された場合には、新たな仮説を生成し、さらにインタビューデータを深掘りする機会にもつながります。
手順は以下のとおりです。
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メニューの[探索] タブの虫眼鏡アイコンをクリックし、[クロス集計] を選択
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クロス集計基準の [コード] 欄下の [+] をクリック
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対象となるコードにチェックを入れ [OK] をクリック
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[属性1]、[属性2] にてプルダウンメニューから対象とする属性を選択
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[クエリを実行] をクリック
クエリの結果が表示されます。
リボン内の [転置] 等を選択することで表を見やすくすることも可能です。
[チャート] タブに切り替えて視覚化することもできます。
クエリの結果の保存
クエリの結果はいつでも確認できるよう、プロジェクト内に保存しておくことができます。
(注意:結果は自動されません。必要な分析結果は必ず保存してください)
手順は以下のとおりです。
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クロス集計基準にて [結果を保存] をクリック
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出現した画面にてクエリの結果名を入力し [保存] をクリック
クエリの結果は、ナビゲーションビュー [クエリ] 下の [クエリの結果] に保存されます。
リストビューに表示されたクエリの結果の名前をダブルクリックすることで、その内容を詳細ビューで確認することができます。
まとめ
インタビューデータに年齢や職業などの属性を追加し、クロス集計を行うことで、「どの属性の人が、何について話しているか」という傾向を明確にできます。これは、質的コーディングに数の説得力を加え、客観性と信頼性を高めるとともに、データから新たな仮説を発見する機会を提供します。より深く多角的な洞察を得るために、ぜひ属性の追加とクロス集計をご活用ください。