質的データの視覚化 : 初期アイディアから分析的な洞察へ

著者 KATH MCNIFF

質的データの分析と、説得力のある表現をサポートするNVivoの視覚化機能。その視覚化機能は実際の研究にどのように使えるのか気になる方も多いと思います。ここでは代表的な機能5点と使い方をご紹介します。

単語やフレーズは質的研究者にとってパンとバターのようなものです。対象となるデータがインタビューの書き起こしであっても、サーベイの自由回答やジャーナルの記事であっても、言葉はデータ中から豊かな意味と微妙なインサイトを伝えてきます。

しかしながら、長時間にわたり多量のテキストに集中すると、時に全体像を見失ってしまうこともあります。
そんな時こそ視覚化が役立ちます。


目次

単語クラウド

単語クラウドは、ソースデータで使われている言葉を視覚的に表現するものです。多く使われている単語は大きく、使用頻度の低い単語は小さく、その語が出現する頻度を文字の大きさで表現しています。

ソースの中で共通してよく使われている単語を俯瞰するのに最適で、そこから浮かび出てくるテーマに注意を向けることができます。

例えば、以下は私が質的研究の信頼性に関する記事を書いた時に使った単語クラウドです。

頻出度の高い単語を表示する単語クラウド

出力の手順は以下の通りです。

  1. ジャーナル記事や書籍からの抜粋をNVivoにインポート
  2. 頻出語クエリを実行
  3. 単語クラウドを表示

この単語クラウドを見ていて、さまざまな興味深いコンセプトがあると気づきましたが、その中でも、”validity(信頼性)”が際立っていると考えました。

そこで”validity”という単語を再確認するため、著者ごとにどのように語っているかという視点から深堀りしていくことにしました。この言葉がどのような文脈で使われているかを確認するため、NVivoのテキスト検索クエリを実行することから始めました。

テキスト検索クエリの結果

こうして各著者が”validity”に関してどのように語っているかを簡単に確認することができたのですが、もっと視覚的にわかりやすく見るためにワードツリーを表示させることにしました。


ワードツリー

ワードツリーはテキスト検索の結果を樹木の枝のように表現するので、検索した言葉やフレーズがどのような文脈で使われているかを見ることができます。

文脈の中でのキーワード(KWIC - keyword in context)を探索できるだけでなく、その言葉の周囲で繰り返し現れるテーマやフレーズを見つけることもできます。

以下が”validity”を検索した結果のワードツリーです。

ワードツリーで文脈付きキーワードを探索

ワードツリー上で枝部分をクリックしてハイライトできます。キーワードの前後にくるフレーズを確認することで、新たな発見や考察に役立てることができます。

”validity”のワードツリーを探索しながら、いくつかのパターンに興味を引かれました。例えばいくつかの文脈の中で、”quantitative(質的)”という言葉が、「グラウンデッドセオリーの理論家が ”validityというクライテリアを採用することはほとんどない”(seldom embrace the criteria of validity)」 というアイデアとともに出現します。

おそらく”validity”というのは含みのある言葉で、質的研究者の一部の間では議論の対象となっているのでしょうか?

これは興味深かったので、この意味を探索するためにさらにデータを掘り下げ、読み込んでいきました。

ワードツリーは著者たちがどのような言葉で”validity”について論じているかを示してくれ、新たな考察への魅力的な道案内となりました。


マインドマップ

マインドマップは主題を中心に置き、その周囲に関連するアイディアを配置するダイアグラムのことです。

ブレインストーミングに非常に適していて、それぞれのテーマがどのようにつながっているかを視覚化し、データの全体感を眺めることができます。

以下は、私が質的研究の信頼性についての初期アイディアをとらえるために作成したマインドマップです。

マインドマップで初期アイディアをとらえる

マインドマップ は以下の手順で作成できます。

  1. 探索タブからマインドマップを選択
  2. 名前をつける
  3. 主題のタイトルをつける
  4. マインドマップツールを使い、主題の周辺アイディアを加える

マインドマップは自身の思考をとらえるだけでなく、初期のコーディング構造を作ることにも役立ちます。そうしておいて、資料を読みながら、事前に作成されているノードにコーディングしてくことができます。

コーディングの準備ができた段階で、[ノードとして作成]ボタンをクリックすると、NVivoが自動的にマインドマップと同じ階層構造のノード階層を作成してくれました

[ノードとして作成]をクリックすると、マインドマップと同じ階層構造のノードが作成される

こうしてコーデイングの準備を整え、記事や書籍の抜粋を読みながら、これらの初期テーマのノード、もしくは新たに出てきたテーマは新規ノードに、該当する部分をコーディングしていきました。

ある程度の量をコーディングした後、影響力のある著者たちを比較したくなりました。そこでまず、行列コーディングクエリを実行し、テーマ×著者のクロス表を出力、コードされたコンテンツを比較してみました。そしてさらに比較ダイアグラムを使用して視覚的に見比べることにしました。


比較ダイアグラム

比較ダイアグラムにより、プロジェクト内の二つのアイテムを自動的に視覚化することで、共通点や相違点を探索できるようなります。

比較ダイアグラムの出力手順は以下の通りです。

  1. リボンの探索タブから比較ダイアグラムをクリック
  2. 比較したいアイテムを選択

以下は影響力のある二人の著者、SaldanaとCharmazのコーディングを見比べるための比較ダイアグラムです。私のコーディングによると、このダイアグラムで見て取れる通り、両名ともgeneralizability(一般化可能性)、ethics(倫理)、reflexivity(再帰性)について言及しています。

比較ダイアグラムを用いて、2名の著者が共通して言及しているテーマ(ノード)を確認

ズームアウトしてみると、言及しているテーマに違いがあることもわかります。

比較ダイアグラムで外側に配置されるノードは、両名に共通しないテーマ(ノード)を示してる

ここで興味を引かれたノードをダブルクリックし、さらに読みこんでいきます。これにより、専門家たちの考えに共通するのはどの部分で、どこに異なる考えを持っているのかを判断することができました。

こうしていくうちに、新たなアイディアを得て展開していく自身の知見を捉えるべく、さらにコーディングを進めていきました。その中でいくつかのコンセプト、例えば ‘integrity(整合性)’ ‘transparency(透明性)’ ‘reflexivity(再帰性)’などに、より意義があるのではないかと感じるようになっていきました。


階層チャート

階層チャートはサイズの異なる四角形が入れ子状になっており、各四角形のサイズは各々のノードにコーディングされた量を示しています。
四角形のサイズが大きいほど、コーディングの数が多いことを示しています。

数クリックで主要なテーマを理解することができます。

  1. リボンの探索タブから階層チャートをクリック
  2. ノードを選択Choose to chart nodes.

以下は私のコーディングに従い、NVivoが作成した階層チャートです。

階層チャートはノードを入れ子状の四角形で表す

階層チャートは、私が直観的に考えていたことを確認させてくれました。’validity (妥当性)’ が ‘reflexivity(再帰性)’‘integrity(整合性)’ ‘transparency(透明性)’ というテーマが大きな四角形で表され、他に比べて多くコーディングされています。

最終的により多くを占めている主要なテーマが、私の質的研究の信頼性に関するブログ記事において重要な柱となりました。

自身のコーディングがどのように進行しているかを確認するために、定期的に階層チャートを確認するのもよいかもしれません。


分析パワーをチャージ

記述されたテキストに集中している時、データを視覚化しようとはあまり考えないかもしれません。しかし、私は行き詰ったと感じたり、一歩引いてプロジェクトについて考えなおす必要がある時、データを視覚化してみるようにしています。視覚化により新たな視点を持つことができ、多くの場合、刺激的な新しい手掛かりを与えてくれます。

また、視覚化は自身の発見を発表したり、同僚と進捗状況を共有したりする有効な方法でもあります。右クリックからエクスポートするだけで、レポートやプレゼンテーションで使用することができます。

ここで紹介した視覚化は、NVivo for Mac と NVivo 11 Pro for Windowsで使用可能です。ぜひ次の質的研究プロジェクトで試してみてください。


著者 KATH MCNIFFについて
KATH MCNIFF

Kath McNiff is on a mission to help researchers deliver robust, evidence-based results. If they’re drowning in a sea of data (or floods of tears) she wants to throw them an NVivo-shaped life raft. As an Online Community Manager at QSR, she knows that peers make the best teachers. So, through The NVivo Blog, Twitter and LinkedIn, she shares practical advice and connects researchers so they can help each other. When she’s not busy writing blog posts, swapping stories on social media or training the latest tribe of NVivo users, she can be found wrestling four feisty offspring for control of the remote.

元記事 |Move from early ideas to analytical insight with NVivo visualizations | The NVivo blog

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